第22話

『はぁ…』


今日、お昼休みに見かけた


校門にいたあの子が誰だったのか


聞けなかったのは


それを聞くことが


達也を裏切ることだとわかっているから


だけど


本当は、そんなことよりも


《俺の母親、死んだんだ。》


弘人の大きな傷を見てしまったから。


『…』


机の引き出しを開ける


小学生の頃、弘人のお母さんがくれた当時流行っていたキャラクターのキーホルダー


弘人と達也くんと優ちゃん3人お揃いだよって、おばさんは嬉しそうに笑った


いつも、自分の子供みたいに可愛がってくれた


優しかったおばさんは


もういない。


ピピッピピッ。


『…』


お風呂が沸いた音


タオルを持って部屋を出た


思い出は


こんなにも鮮明に


心の奥に焼きついていた


次の日


学校に来た弘人の周りには


いつも以上に女子達が集まって騒がしかった


「弘人彼女いたんじゃんー!」


「いつから付き合ってんの!?」


「超ショックなんだけどー!」


「…るせ。」


だるそうに机に顔を伏せた弘人は


そのまま1時間目の授業が終わるまで眠っていた

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