第24話

「ねぇ優、次体育祭の役割決めだって」


はしゃいだようにそう言った美羽


「佐野と同じの出たいーっ」


「七美は足速いから絶対リレーだよ」


『私運動苦手だからなぁ。』


「優ってトロそうだもんね笑」


『うるさいっ笑』


結局、部活をやっているスポーツの得意な子からリレーや騎馬戦の出場選手に選ばれ


私と美羽は残り物の二人三脚になった


七美は部活をやっていないのにスポーツテストの点数でリレーに選ばれた


「ねぇ、多田は何出るって?」


『リレーって言ってた』


「多田速そうだもんねぇ」


『中学の時も3年連続アンカーだったよ笑』


「すごー。運動神経いい彼氏ってかっこいいよね」


黒板に書かれた選手一覧


リレーの下に並ぶ”佐野”の名前


小学生の頃


いつも弘人と達也はアンカーだった


私はいつも二人を応援していたけれど


心の中で叫んでいたのは


やっぱり弘人の名前だったんだ


「じゃあねー優っ」


「多田と仲良くね~笑」


『うん笑 またね』


結局、あのまま弘人は教室に戻ってこなかった


弘人の机に残された鞄


教室にはまだ、ちらほらと生徒が残る


日直が消し忘れた黒板


そよ風で揺れるカーテン


グラウンドから聞こえる野球部の声


『…』


日常の放課後の風景


秋の風が気持ちいい



金木犀きんもくせいの香りがする


雲が


まるで空の青に溶け込むように薄く広がる…

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