第19話

『…ねぇ、いつから?』


「こんなん、中学ん時から皆やってんだろ。」


『っ…だめだよ弘人っ』


「…」


小さくため息をついて


地面に視線を移す


「るせぇよ。」


『…』


「お前に関係ねぇじゃん。」


『…関係あるようにしてんのはそっちじゃん…』


「は?」


『関わりたくないのに…そうしてんのはそっちじゃんっ』


「…」


《キスしてよ、優。》


《お前は俺のもんだよ。》


グッ…


『っ』


「…」


突然ベンチに座る弘人に腕を引き寄せられ


体勢を崩して弘人に体を支えられた状態で


見つめられる


触れそうで触れない


なのに


逃げ出せない…


『…』


しばらくして


「もうしないから。」


『…』


「…許してよ。」


弘人はぽつりと呟いた。


困ったように小さく笑って


静かに離された体


空を見て


「俺の母親、死んだんだ。」


呟いた。


『っ…嘘。』


ねぇ…


この前みたいに…笑ってよ。


嘘だよって…


「…」


…ねぇ、弘人。


『…っ…』


「母親死んで、しばらく親戚んとこ預けられてたんだけど。」


『…』


「なんか、もういいやってなって。」


そうやって小さく笑う


「周りにすすめられて中二で初めて吸った。別に依存してるわけじゃねぇけど、そこからなんとなくめられなかった。」


おかしくもないのに


「別に、今時こんなん珍しくもねぇだろ。」


『…だめだよ…吸わないで。』


「…お前母親みてぇ。」


そうやって


『…』


色のない声であなたが笑った…

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