第16話

「…優は、5年ぶりだから戸惑う部分もあるかもしれねぇけど。」


私の知っていた弘人には


「受け入れてやってほしい。」


もう会えない


『…』


それを変えたのは


弘人の新しい世界で出会った人たち


弘人を好きになった女の子…


弘人が好きになった女の子…


「…ごめんな…優。」


『…どうして達也が謝るの…』


「…」


『…なんで…もっと怒ってよ…』


「…今日、迎えに行かなくてごめん…」


『達也っ…』


「…」


『…怒っていいんだよ…』


「…」


『私…最低なことしたのに…っ』


「じゃあ…優からキスして?」


『…』


そっと


達也の頬に触れる


指先から伝わる達也のぬくもり


静かに


達也に唇を触れさせた


「…許すよ。」


そうやって


ふわりと


私の大好きな笑顔で笑った


『…好き。』


「知ってる。」


『…大好き…達也…』


抱きしめられて


また


キスをして


そんなふうに


私はあの頃


あなたを好きになった


あなたを


大好きになった


ねぇ


私は知らなかった


私が幸せだと感じている今


傷付いている人がいたということ


心に大きな


痛みを抱えている人がいたということ




私は





知らなかったんだ…

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