空。

第13話

はじめて弘人とキスをした


小学4年の夏。


弘人の家に遊びに行った日


珍しく達也は用事があって遊べなくて


弘人の部屋で二人、かき氷を食べた


私はイチゴ


弘人はメロンのシロップをかける


かき氷のシロップは色と香りが違うだけで味はみんな同じなのに


イチゴも食べたいって言った弘人が


少し照れたように首をかいた後


私に小さくキスをした


窓から吹き込むそよ風がカーテンを揺らす


近くの木で


セミが鳴いていた




『…』


「ねぇ優、聞いてる?」


『え?』


「朝からぼーっとしすぎ。ねぇ佐野くんは?」


『あ…来てないね。』


「転校してきた次の日から休みー?」


「私もっと佐野くんと話したかったのにーっ」


『…』


「そういえば優、多田と喧嘩したの?」


『え、なんで?』


「朝一緒じゃなかったし、今日一回も会いに来てないじゃん」


『別に、毎日一緒にいるわけじゃないよ』


「毎日一緒にいるじゃん笑」


「けどまぁ、優と多田って付き合って長いもんねー。たまには喧嘩もするよねっ」


『だから喧嘩じゃないー。』


今日


珍しく達也は迎えに来なかった。

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