第11話

弘人と達也と


よく遊んだ公園


達也がブランコで振り落とされそうなほど加速して


それで、いつも弘人は


呆れたように


危ないよって止めるの


またやってる、なんて


私は滑り台から滑り降りて


そんな二人を見て笑う。


ブランコに座って


小さく足を動かして揺れる


あの頃は


足の先が少し触れるくらいで


私にとってはすごく大きかった


あんなに広かった砂場


滑り台


シーソー


一番大きいサイズの鉄棒は


手を伸ばしてやっと掴めるほどで


『…』


キコキコと


少し錆び付いたブランコの音が


小さな公園に響く


見上げると


小さな星が見えた


『…会いたいなぁ…』


あの頃の


あの子たちに


会いたい…


『…』


ザッザッ…と


土を踏む音が


私の少し前で止まる


『…』


「…」


あの頃の私たちには


想像もできなかった



私たちは


こんなにも


遠い…


「…キスしてよ、優。」


『…しないよ…』


「…笑」


『っん…』


小さくきしんだブランコの音


顎を持ち上げるようにして


強く触れた唇から


漏れる息は


誰のもの…


『んんっ』


口の中に


弘人の舌が入ってくる


強く瞑った目から伝う涙を


あなたは


てのひらで包み込んだ…

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