第10話

『…』


達也の鋭い視線から


私は


目を逸らせない…


『…っ…』


繋がったままの手に


達也の力が、少しだけ加わったのは


まるで


離れていかないで…って


そう言っているみたいで


悲しかった


《別れてなんてやらねぇ。》


達也に、こんなことを言わせたのは


『…ごめんね…』


私だ…


『…』


達也と私は、隣のマンションに住んでいる


物心ついた頃から


マンションの近くにある同じ公園で遊んでいた


まだ母親に連れられて公園に遊びに来ていたあの頃の私たち


すぐ近所に住んでいた弘人も


よくその公園に来ていて


気付けばいつも、私たちは3人一緒だった


「また明日な。」


『うん。』


マンションの前で達也と別れて


私はマンションには入らずに


あの頃


いつも遊んだ公園に来た


『…』


あんなに小さかったのに


私たちは


少しずつ


大人になった


そして


それぞれの環境の中で


少しずつ変化していくもの


それを


止めることはできない


弘人は


私の知らない場所で


知らない人たちの中で


16歳になった


今の弘人を


私は知らない


知ることができなかったもの


ずっと隣で


見ていたかったもの


ずっと


ここにあると思っていたもの


ふたりで


同じ空気の中で


同じ景色を眺めて


同じ人と触れ合って


そうやって


大人になるのだと思っていた


だけど


この町は不思議なほど


何も変わらない…

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