第3話

ガラッ


「優おはーっ」


『おはよーっ七美』


「ねぇ、まーた多田の家泊まったの?」


『うん、だって達也が一人じゃ寂しいってうるさいんだもーん』


「言ってねぇだろそんなこと」


『きゃっ』


達也に後ろから首に腕を回される


達也がふざける時の癖


『本気で苦し一っ離して!』


「はいはい、朝からラブラブですねー多田夫婦。」


『ちょっと美羽、助けてよー!』


「おっす。多田、宿題見せてっ」


「あ?俺隣のクラスだっつの」


「じゃあ昼休みでいいから解き方教えてくれーっ」


「あほか笑 宿題くらい自分でやれっつの」


「は?冷たくね?多田ーっ」


「じゃあまた後でな、優。」


『うんっ』


「あ、そうだっ。ねぇ優、聞いた?」


『え?』


あの頃、私たちは


「うちのクラスに転校生来るらしいよー」


永遠なんて


そんなちっぽけなものを


『へぇ、こんな時期に珍しいね。』


本気で信じていたんだ。


ガラッ


「あっ来た!」


「男子だ♪てか超イケメンじゃん!」


「ほらーチャイム鳴ってんぞ席に座れー!」


『…』


「このクラスに転校してきた佐野だ。佐野、自己紹介して」


「は?だりぃ。」


「簡単にでいいから」


『…』


「佐野っす…よろしく。」


「佐野ー適当すぎ。まぁいい、席はそこの佐々木の後ろ空いてるから座れ。」


『ぇ…』


「優いいなー♪佐野くん後ろだって!」


『っ…』


少し着崩した制服


真新しい上履きのかかとは踏みつぶして


茶色に染まった少し長めの髪の隙間から見えるピアス…


『…』


隣を通り過ぎる時に聞こえた


「…よ。」


あの頃とはもう違う


低くて落ち着いた


男の人の声…


ドカッと後ろの席に座った佐野


『…』


佐野弘人…


「ねぇ、優ちゃん。」


『…』


「後で校内案内してよ。」


そんなふうに


『…っ…』


人を見下すような声で…

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