第2話

『…』


「優?」


『ぁ…夢、見てた。』


「ん?」


『…弘人の夢。』


「…」


グッ


『んっ』


ベッドに体を押し倒されて


突然キスをする


『っ…ん…』


「…」


しばらくして離れた唇


舌の感触が残る


頭がクラクラする


『…達也。ごめん…怒んないで。』


覆いかぶさるように私を見下ろしたまま


「怒ってないよ。」


達也はそう言って


小さく笑うんだ


だから私は


記憶に蓋をする


思い出に


背を向ける


『ねぇ、達也。』


「なに。」


『ありがとね。』


「…なんだよ。」


『なんでもなーい。』


「ほら、早く用意しろ。ほんとに遅刻する。」


『うんっ』


高校に入ってすぐ


海外赴任することになったおじさんに着いて行くと言ったおばさん


まだ高校生の息子を置いて行くなんて


相当な恋愛体質な達也のお母さん


昔から放任主義だとは思ってたけど


こんな広い家に達也一人を残して行っちゃうんだもん


弘人のおばさんがもしもこのくらい放任主義なら


もしかしたら弘人は


ずっとあの家にいられたのかな?


なんて…


小学生の子供を置いていけるわけなんてなかったことくらい


わかってるんだけど。

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