第40話 境界性パーソナリティ障害の中で

境界性パーソナリティ障害(BPD)は、僕にとって日常の中で大きな壁のような存在だ。それは、心の中に常に嵐が吹き荒れているような感覚で、感情が激しく揺れ動き、コントロールできないことが多い。そのせいで、他人との関係を築くことがとても難しく、いつも孤独感や自己嫌悪に苛まれる。


この障害を持っていると、特に対人関係での悩みが絶えない。誰かと親しくなることが怖く、心の中で「どうせ裏切られる」「本当は自分のことなんてどうでもいいと思っているのではないか」といった不安が常に渦巻いている。その結果、相手の一言や態度に過剰に反応してしまい、感情が爆発することがある。


些細なことで感情が激しく揺さぶられ、自分の中でその感情をコントロールできないことが多い。例えば、友人からの些細な言葉が、「自分が嫌われているのではないか」という恐れに変わり、気持ちが激しく動揺してしまう。そして、怒りや悲しみが湧き上がり、それを相手にぶつけてしまうことがある。その後、自分の行動を後悔し、深い自己嫌悪に陥る。


感情が揺れ動く度に、自分を見失ってしまう感覚がある。自分が誰で、何を望んでいるのかがわからなくなり、ただ感情の波に飲み込まれてしまう。その波が過ぎ去った後には、まるで自分の心に傷跡が残るようで、何もかもが崩れてしまったような虚しさが広がる。


境界性パーソナリティ障害のもう一つの悩みは、自己像の不安定さだ。自分が何者なのか、何を求めているのかがわからず、いつも不安定な感覚がつきまとう。自分が一貫していないような、まるで心の中がバラバラに散らばってしまっているかのような感覚だ。そのせいで、どんなに小さなことでも「本当にこれでいいのだろうか?」と迷い、決断することができないことが多い。


そして、極端な思考のパターンも悩みの一つだ。誰かのことを「理想的だ」と思ったかと思うと、些細なことで「裏切られた」と感じ、その人を遠ざけてしまう。自分の中での「全てが良いか、全てが悪いか」という極端な思考が、対人関係に大きな影響を与えてしまう。誰かと親しくなっても、その関係が突然崩れてしまうことがあり、その度に深い孤独感に襲われる。


そんな自分に対して、深い自己嫌悪を感じることが多い。感情が爆発して周りに迷惑をかけてしまった時や、自分の行動をコントロールできなかった時、その後に押し寄せる罪悪感は、とても強烈だ。「なぜ自分はこんなに壊れているのだろう」と、何度も自分を責めてしまう。


この障害を抱えていると、自分自身を受け入れることがとても難しい。何度も繰り返す感情の嵐や、対人関係の混乱を経験する中で、「自分は他の人と違う」「普通に生きることができない」と感じてしまうことがある。普通のことが普通にできないということが、自分の心に大きな重荷としてのしかかってくる。


それでも、少しずつ自分を理解し、受け入れることが大切だと思う。感情が激しく揺れ動く時、それを無理に抑え込もうとするのではなく、まずはその感情を認め、受け入れること。自分を責めることなく、「今、こういう気持ちなんだ」と自分に言い聞かせることが、少しずつ心を落ち着かせるための第一歩だと思う。


また、少しずつでも自分の中での「安定」を見つけることが大切だ。感情が揺れ動く時に、自分を落ち着ける方法を見つけること。例えば、深呼吸をする、好きな音楽を聴く、落ち着く場所に行く。そういった小さなことでも、自分を落ち着けるための「アンカー」を見つけることが、心のバランスを保つために重要だと思う。


境界性パーソナリティ障害を抱えていると、普通の生活を送ることがとても難しい。けれど、その中で少しずつでも自分を受け入れ、感情と向き合うことができれば、それが自分を癒す一歩になると思う。今はまだ不安定な心の中で揺れ動いているけれど、それでも少しずつ前に進んでいきたい。感情の波に飲まれず、自分らしく生きるための方法を見つけながら、少しずつでも前に進んでいけるように。

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