第37話 安心できる場所を探して
僕は、いつも心の中で安心できる場所を探している。どこにいても、どんな状況でも、どこか不安な気持ちが心の隅に存在しているような感覚がある。その不安が消えることはなく、まるで心の一部として根付いているかのようだ。
安心できる場所というのは、物理的な場所のことだけではない。心が安らげる時間や、人との関係、そして自分自身の内面と向き合うことも含まれる。外の世界で何が起きていても、自分の心の中に安らぎを感じることができれば、それが「安心できる場所」になるのだと思う。
僕にとっての安心できる場所は、ひとりで過ごす静かな時間だ。誰にも邪魔されず、好きな音楽を聴いたり、読書をしたりする時間は、心の中を静かに保つためにとても大切だ。その時だけは、自分自身を取り戻せるような感覚がある。
けれど、心の中の不安が大きくなると、その「安心できる場所」にも逃げ込むことができなくなる。何をしても落ち着かず、何をしていても心がざわつく。自分の心がどこにも落ち着かず、まるで宙に浮いているような感覚になることがある。その時、僕は自分の中にある「安心」を見失ってしまう。
安心できる場所を求めて、いろいろなことを試してみた。新しい趣味を始めてみたり、リラックスできる音楽を探してみたり、瞑想を取り入れてみたり。けれど、心の中にある不安を完全に消し去ることはできなかった。
そんな時、僕はふと、自分の「不安」と向き合うことが必要なのではないかと考えるようになった。これまで、安心できる場所を求めることで不安を抑え込もうとしていたけれど、それはまるで砂漠でオアシスを探し続けるようなものだったのかもしれない。不安そのものを受け入れ、共に生きていく方法を見つけなければならないのだと思った。
不安は、誰にでもある感情だと思う。それは、何かを失うことへの恐れや、未来への不安、あるいは自分自身に対する疑念から生じるものだ。けれど、不安を感じること自体が悪いことではない。むしろ、不安を感じることで、自分にとって何が大切なのかを知ることができる。
僕は、自分の不安を正面から見つめることに決めた。不安を避けるのではなく、それと向き合い、その中で「安心できる場所」を見つけることができるのではないかと思ったからだ。例えば、日常の中で不安を感じた時、その不安がどこから来るのかを自分に問いかけてみる。すると、それは過去の経験や、未来への漠然とした恐れから来ていることに気づくことがある。
その不安が「今、ここ」にないものであれば、少しずつそれを手放す努力をしてみる。もちろん、それがすぐにできるわけではないけれど、自分にとって「本当に必要な不安」なのかを見極めることで、心の中に少しだけ余裕が生まれることがある。
また、自分を安心させる方法を見つけることも大切だ。僕にとっては、深呼吸をすることや、ゆっくりとお茶を飲むこと、自然の中を散歩することがその一つだ。特に、自然の中で過ごす時間は、僕の心を穏やかにしてくれる。風の音や木々の揺れる姿を見ていると、自分が小さな存在であり、世界の一部であることを実感することができる。
安心できる場所を求めることは、終わりのない旅のようなものかもしれない。それでも、その旅を続けることで、少しずつ自分の心が安らげる場所を見つけていけるのだと思う。不安が消えることはなくても、その不安と共に生きていく方法を見つけることができれば、それは僕にとって大きな一歩になるだろう。
これからも、自分の「安心できる場所」を探し続けたい。そして、それがどんな形であれ、自分の心の中に平穏をもたらしてくれるものであることを願っている。安心できる場所を見つけることができたら、その場所で少しずつ自分を癒し、成長させていけるように。そして、いつかその場所が、僕の心の中に自然と広がっていくことを願っている。
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