第36話 孤独という影

僕は、一人の時間を大切にしている。誰にも邪魔されず、誰にも気を使わずに、自分のペースで過ごせる時間は、心の休息を与えてくれる大切なひとときだ。それなのに、どうしても孤独感が僕を襲うことがある。誰かと一緒にいる時でさえ、まるで心の中にポッカリと空いた穴が広がっていくような感覚に襲われるのだ。


孤独という感情は、僕にとってまるで影のようだ。普段は気にしないようにしているけれど、ふとした瞬間にその影が現れて、心の奥底に重くのしかかってくる。それは、友人と過ごしている時でも、家族といる時でも、時には一人でリラックスしている時でも突然現れる。


例えば、夜にふと目が覚めた時、周りが静まり返っている中で、どうしようもない寂しさが僕を包み込むことがある。周りには誰もいないわけではないのに、まるで自分がこの世界で孤立してしまったかのような感覚だ。心がキュッと締め付けられるような、その瞬間の孤独感は、どうやっても打ち消すことができない。


一人の時間を大切にしたいと思う一方で、こうした寂しさが突然襲ってくるのは、とても矛盾しているように感じる。自分の中で一人でいることが好きだと思っているのに、その一人でいる時間が時には苦痛になることもある。どこかに誰かと繋がっていたいという気持ちと、一人でいたいという気持ちが、いつも心の中でせめぎ合っている。


僕は一人でいる時、自分の世界に没頭できる。好きな本を読んだり、音楽を聴いたり、映画を見たり。自分のペースで時間を過ごせるその瞬間は、本当に心地よい。それなのに、どうしても孤独感が襲ってくると、自分のしていること全てが無意味に感じられてしまうことがある。


この孤独感はどこから来るのだろう。いつも心の中でその答えを探している。誰かと深く繋がりたいという欲求があるのか、それとも自分が周りの人と比べて「何かが欠けている」と感じてしまうからなのか。答えは見つからないまま、孤独感だけが心に重くのしかかってくる。


一人でいる時間を楽しんでいる時でも、ふとした瞬間に「自分は一人でいることに耐えられるのだろうか」と思うことがある。一人でいることを選んでいるはずなのに、その選択が間違っているかのように感じられることがあるのだ。まるで、他の人と繋がることを諦めてしまったかのように思える瞬間がある。


でも、それはただの思い過ごしなのかもしれない。人は誰しも孤独を感じることがあると思うし、それは決して悪いことではないのだと思う。自分がどんなに周りと繋がっていても、どこかで孤独感を感じることは、避けられないことなのかもしれない。


その一方で、孤独感を感じることは、自分がもっと深く誰かと繋がりたいという気持ちの表れなのかもしれない。自分自身ともっと向き合い、他者との関係をより深く築いていくための一つのきっかけなのかもしれない。


僕はこれからも、一人の時間を大切にしながら、孤独感と向き合っていきたいと思う。孤独を感じることは悪いことではないし、それが自分を成長させるための一つの過程だと受け入れたい。その上で、自分が本当に必要としているものが何なのかを、少しずつ見つけていけたらと思う。


孤独感は、まるで自分自身を見つめるための鏡のようなものだ。その鏡を通して、自分の心の奥底を覗き込み、自分が本当に望んでいるものを見つけていくことができれば、きっとその先には新しい自分が待っているのだろう。


これからも、孤独という影と共に生きていこうと思う。それが僕の一部であり、それを受け入れることで、もっと自分らしく生きられるようになるのだと信じて。孤独感が襲ってきても、それを恐れずに向き合い、自分を見つめ続けていきたい。そうして、少しずつでも、心の中の寂しさを癒していけるように。

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