第24話 感情ノートで心を整理する

僕は、感情の波に飲み込まれることが多い。不安や怒り、悲しみ、喜び、様々な感情が一気に押し寄せてくると、自分がどこにいるのかわからなくなってしまう。そんな時、僕を支えてくれるのが「感情ノート」だ。


感情ノートとは、僕がその時々に感じた思いをそのまま書き出すためのノートだ。特別なルールもフォーマットもない。ただ、自分が感じたままを素直に書き記す。ノートにペンを走らせることで、心の中に溜まった感情を少しずつ吐き出していく。


不安を感じた時、僕はその不安をただ感じ続けるだけではなく、ノートに書き出してみる。「今、これが不安だ」と具体的に書いてみることで、漠然とした不安の正体が少しずつ見えてくる。文字にしてみると、頭の中で膨らんでいた不安が、少しだけ形を持ち、扱いやすくなる。


例えば、「明日の仕事がうまくいくか不安だ」と書き出してみる。すると、その不安に対して「何が不安なのか」を考えるきっかけになる。失敗することが怖いのか、それとも周りからの評価が気になるのか。ノートに書くことで、自分の心の中を一歩引いて眺めることができるのだ。


怒りを感じた時も同じだ。誰かの言葉や行動に苛立ちを感じた時、その怒りをそのままぶつけるのではなく、ノートに書き出してみる。「あの時、あの言葉がとても腹立たしかった」「どうしてそんなことを言われなければならないんだ」と感情を文字にすることで、その怒りの根っこが見えてくる。


怒りの根本にあるのは、自分が傷つけられたという感覚や、自分が認められなかったという思いだ。それをノートに書くことで、「自分はこう感じていたんだ」と気づくことができる。怒りをただ感じ続けるのではなく、その感情を客観的に見ることができるようになる。


悲しみも同様だ。何かに傷つき、心が沈んだ時、その悲しみをノートに書き出してみる。「あの言葉が悲しかった」「この出来事が辛かった」と、自分の悲しみをそのまま記す。文字にすることで、その悲しみが少しずつ和らいでいくのを感じることができる。


感情ノートは、僕にとって心の整理整頓のツールだ。感情の波に飲み込まれ、溺れそうになった時、ノートに感情を書き出すことで、自分自身を少しずつ取り戻していく。感情をそのまま感じるのは辛いけれど、それを文字にすることで、感情と距離を取ることができる。


感情を書き出すことは、まるで心の中の「見えないもの」を目に見える形にする作業だ。それは簡単なことではないけれど、その作業を通して、自分の感情を少しずつ整理することができるようになる。感情の波に飲み込まれることが減り、自分をコントロールできる感覚が戻ってくる。


もちろん、感情ノートに書いたからといって、すぐに気持ちがスッキリするわけではない。時には、書いても書いても感情が渦巻き続けることもある。でも、そんな時は焦らずに、ただひたすら書き続ける。「今、こう感じている」ということを認めるだけでも、少しだけ心が軽くなることがある。


感情ノートは、僕にとって一つの「逃げ場」でもある。誰かに感情をぶつけることなく、自分自身に向き合うための場所だ。感情を書き出すことで、自分の心の中を冷静に見つめることができる。何も書かずに感情を抱え続けるのは辛いけれど、ノートに書くことで、少しずつ感情の波を抑え、心の中を落ち着かせることができる。


僕は、感情ノートを続けることで、自分の心と向き合うことを学んだ。感情に振り回されず、感情を受け止め、それを言葉にすることで、自分自身を少しずつ取り戻していく。感情の波に翻弄されることなく、自分の感情を受け入れることで、心が少しだけ楽になるのだ。


これからも、僕は感情ノートを続けていく。自分の心を言葉にし、感情の波に押し流されないように。感情ノートは、僕の心の整理整頓のための大切な道具だ。心が揺れるたびに、そのノートに自分の思いを記していこうと思う。そうして、少しずつでも自分の心と向き合い、感情の波を乗り越えていきたい。

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