第86話

「祐樹…」



「俺なんかより、お前を幸せに出来る普通の男が現れるかもしれねぇ」



苦渋に満ちた声で言う。



「そんな…、幸せって…」



「けどっ!無理なんだよ。俺はお前を手放すことなんて出来ねぇ。たとえ、お前がほかの男を好きになっても、監禁してでも傍に置く」



その言葉を表したように、祐樹の腕が、がっしりとあたしの体に巻き付く。



あたしはその腕に安心して、幸せな気持ちになりながら、ホッと息をついた。



「一回、お前を失った。……不安になるに決まってんだろ」

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