第84話

しばらく抱きしめているうちに、祐樹の腕があたしの腰の辺りを撫でた。



あたしは苦笑しながらもその手をしっかりと叩き落とし、口を尖らせながら言った。



「なんか、狡(ずる)い…。あたしばっかり不安になってる気がする…」



「狡いってなぁ…」



なんだよ、それはと祐樹が苦笑した。



「だって、祐樹モテるでしょ?祐樹が浮気しないのは信じてるけど、好きだから不安になるよ」



綺麗な人が周りにいっぱいいるみたいだし…。



不満げな視線を祐樹に向ける。

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