第74話

機嫌が悪い?


そんな可愛いもんじゃないでしょ?!



いつの間にか店内は静かになっていて。



足音が近づくごとに、体から酔いが抜けていく。



俯くあたしの目の前で、とうとうその足音が止まった。



「イズミ」



低い声が降ってくる。その一言で周囲の空気が凍った。



「…はい」



無視なんか出来る雰囲気じゃなくて、あたしは返事をした。



「顔上げろ」



その言葉に、あたしは恐る恐る顔を上げた。

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