第84話

素肌に当たるヒンヤリとしたシャツの感触に少し眠気が覚めた。




煙草の火を消した祐樹が、あたしを迎えるように腕を広げる。




その腕の中に収まると、慣れた温もりと香りにホッと息をつく。




あたしの髪に指を絡ませて遊ぶ手の感触に、胸から顔を上げて祐樹を見つめた。




「ねぇ、祐樹?」



「…ん」



「祐樹はどんな噂を聞いたの?」




そう尋ねると、あたしを抱きしめている体が揺れて、祐樹が喉の奥で笑っているのが伝わってきた。




「お前の噂だよ」

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