第Ⅰ章 第5話

私は彼の双子の妹だ。

だが、この家では精霊契約者であるこの双子の兄である左京蒼葉がこの家の全てである。


私はそんなこの双子の兄である彼の邪魔をしない様に息を殺して生きる他、無いのだ。そうやって暮らす様に両親に強制されているのだから。


それは一種の呪いだ。

呪いはゆっくりと私の体を蝕んで行く。

ここでの生活は私にとって呪い以外の何物でも無いのだから。


「何か手伝おうか?蒼蝶」

お兄様は私にそう聞いた。「いいえ、蒼葉様。そのお心遣いで十分ですよ」

私はそう答えた。


すると「おはようございます、蒼葉様、蒼蝶様」

そう私とお兄様に挨拶して来たのは私の双子の兄・蒼葉が契約している氷の精霊・ジーヴルさんだった。


「おはよう、ジーヴル」

お兄様はジーヴルさんにそう挨拶した。


「おはようございます、蒼蝶様。何時も朝はお早いですね。ご無理はなされていませんか?」

ジーヴルさんは私にそう聞いた。


「・・・おはようございます、ジーヴルさん。


・・・私みたいな存在に気に掛ける必要は有りませんよ。・・・それに無理なんて・・・して居ませんから」

私はそう答えた。


「そんな事は有りませんよ、蒼蝶様」

ジーヴルさんはそう答えた。


私は話を切り上げ、キッチンに向かった。

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