第85話

ビクッと体を震わせるあたしの背中を宥めるように大きな手が撫でる。




勇気をだして、祐樹さんの体の向こう側を見ると、明かりの下に入ってくるシン君の姿が見えた。




「……イズミ?」




シン君の優しそうな顔と、穏やかな声に名前を呼ばれても、感じるのは恐怖だけだった。




「…こんなとこに呼んで、どうしたんだ?」




祐樹さんの存在を全く無視して話しかけてくるシン君に少し戸惑いながらも、勇気を出して顔を上げる。




「……別れてほしいの」




言った瞬間殴られたことを思い出し、指先が震えた。

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