第86話

しばらく辺りを静寂が包んだ。




「…その話は家でしよう」



穏やかな声で言いながらこちらに近寄ってくるシン君に恐怖を覚え、祐樹さんの腕にしがみついた。



伸びてくる腕に、怖くなってギュッと目を瞑る。



でも、いつまでたっても触れてこない手にゆっくりと目を開けると、今まで黙って様子を見ていた祐樹さんが、あたしに伸びた手を掴んでいた。




「……連れて行かせるわけねぇだろ」



低い声で言う。



「…誰だ、お前?部外者は引っ込んでろ」



穏やかな顔を崩して、顔を歪めながらシン君が凄んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る