第45話

あまりのことに茫然自失している俺に、そっと近づいた一路が声を掛ける。




「知り合いですか?」



知り合い…

ああ、知ってる。



見間違い、なんかじゃねぇ。




あいつは俺の大切な、たったひとりの女だ。



こんな夜の歌舞伎町にいる奴じゃねぇ。




「あの子、こないだの子じゃないっすか?」

タクシーの消えた先を見つめながら、不思議そうに翔が呟く。




その言葉に問い詰めるようなキツい視線を投げる。




「…なんの事だ?」




俺の問いに答えたのは、一路だった。




「翔が暴れた時、巻き込んでしまった堅気さんですよ」



その言葉にハッとして、一路に詰め寄る。



「あいつに怪我をさせたのか?!」



怒鳴り声に、周りに野次馬が集まってきた。



チッ、うぜぇ

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