第46話

今すぐにでも、あのタクシーを追いかけていきたい。



そんな気持ちをグッと堪える。




「…取りあえず事務所に戻るぞ」



それだけ言うと、事務所に向かって歩きだした。









「…それで、名前も住所も聞かなかった訳だな?」




事務所に着き、向かいのソファーに座る2人に向かって聞く。




「はい。走って逃げてしまったので、ほとんど会話はしませんでした」



「…そうか」



先日の詳しい事情を報告させながら、考えをまとめたくて



どこを見るわけでもなく、視線を窓の外に投げかけた。




さっきのあいつの顔…

今にも泣いてしまいそうだった。



なにがそんなに悲しいんだ……?




俺に会ったのが、そんなに嫌だったのかよ。



なんでそんなに縋(すが)るような目で見つめてきたんだ。







「…聞いてもいいですか?」



一路の声にああと返事をする。

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