第43話
気付くと小さな声で名前を呼んでいた。
「……イ、ズミ…?」
声が届いたかはわからないが、小さな後ろ姿が揺れた気がした。
ジッと見つめていると、ゆっくり女がこちらを振り返る。
顔が見えた瞬間、心臓が止まるほどの衝撃を受けた。
ああ……
驚いた顔をしたイズミと視線が絡む。
たぶん俺も、同じ顔をしているだろう…
小さなその口が開いて、ためらいがちに俺の名前を呼ぶ。
「……祐樹…」
6年振りに、その柔らかい声に名前を呼ばれて、幸せがどんなものかを思い出した
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