第17話

新城組と聞いて思い出した男の記憶に、切ない気持ちが込み上げ、



そんなつもりじゃなかったのに…





ーー気付いたら頬に涙が伝った。




そんなあたしを



困惑した顔で見つめていた二人の男に名刺を返す。



これは




これは…




あたしが持ってはいけないもの。




ーーいけない感情。



そのまま何も言わずに向きを変え、マンションに向かって走り出した。



足を動かす。



走りながらも、いやでも6年前の記憶が蘇る。




大好きだった低い声、あたしにだけ見せてくれた優しい笑顔……




『イズミ』









「……っ」




嗚咽を堪えながらマンションのエレベーターに乗り込み、20階のボタンを押す。




崩れ落ちるようにそこに蹲る。



記憶からは、逃げる事は出来なかった。

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