第31話 キスしたい

 恥ずかしくて冬の胸に両手を添えて、甘えるように顔を埋めちゃって。

 さりげない手の動かし方で、そっとチアスカートの後ろ側から指先を伸ばして内側へと入れて来て、お尻の中央の線を滑らせてくると

「あ、あんっ……だめぇ……」

 小さい声を漏らしちゃう。


 そこに指を滑らせたのは、何も着けていないか確認するためって分かってるけど、そこをなぞられるのは、恥ずかしいんだよ。

 そしてお尻に刻まれた冬の証の場所を指先でツンって押さえてきて


「オレの印があるからって、今日はこれ?瑞稀のエッチ」

 なんて耳元で悪戯な声音で囁やいてくるだもん。

 否定したいけど、迷っちゃうじゃん。

 不可抗力なんだけど、『そうだよ。だから履いてないんだよ』って言いたくなっちゃうじゃん。

 冬の印がお尻にもしっかりと刻まれてるんだよって。


 目を潤ませて、冬の顔を見あげて、また胸元に顔を埋めちゃって。

 ああぁんっ……まるで、『そうだよ』って言ってるみたいじゃん。


「ホントに可愛いなぁ。でも、そうしたら、瑞稀ばっかり見て、試合に集中できなくなるだろっ」

 そんな事を言われたら、嬉し過ぎて、それを想像したら恥ずかし過ぎて、両手で顔を隠して、コクコク頷いちゃう。


 はぁ……そんなの私も応援に集中できません。


「試合前にもう1回、近くで瑞稀の顔を見たかったら、呼んだのにさ。顔を隠す?」

 うわぁぁぁぁ……悶え死にます。

 そんな言葉をシレっと言わないでよ。

 試合前なのに。 

 って、試合前だからか……。


 結局、私は応援に集中できそうにないじゃん。

 もうダメ、両手を顔から離して、真っ赤な顔のまま冬の顔を見上げて


「んっ……冬……、試合前に、キス……したい」

 ああぁぁっ……私は何を言ってるの?

 本音だけど。

 甘ったるい蕩けた声なのが、恥ずかしいよぅ。

 本音だだ漏れなのも恥ずかしいけど。


「ここで?」

「んっ……冬に任せる」

 もう、どこでもいい。

 冬の温もりを感じて、甘い雰囲気に包まれて、赤ん坊が母親に抱かれてるのって、こんな感じなのかな。

 誰かに愛されてるって幸せで。


  冬の手が顎に添えられて、顔を上に向いたまま固定されてゆっくりと、顔を近づけてくる。


 ここでするんだ。

 って云う驚きはなかった。

 冬はこのままここでキスしてくれるんだろうなぁって思ってたから。


 独占欲が強いから、ちゃんとみんなが居る前でキスして、瑞稀はオレのカノジョだってアピールしてくれるって、思ってたし。

 私も被独占欲が強いし、私が冬のカノジョなんだよって。


 だけど、声だけは要注意。

 勝手に出ちゃうから、注意したって出ちゃうんだろうけど。

 声だけじゃないかもだけど、身体は冬に覆われているけど、それって女子側だけなんだよね。

 男子棟からはスカートの中に手を入れたられて、無防備なお尻を指でなぞられたのも見えるんだけど、男子棟には誰もいなかったからセーフなだけで。


 冬もそれを知っていて、あんな事をするだから、そりゃ声だってでちゃうよ。

 身体だってくねくねしちゃいますともーっ。


 目を閉じて、唇を少し突き出して、キス受けする私。

 私からキスしたいって言って、場所は任せるって言ったんだから、当然だよね。


 冬の唇が上から優しく押し付けられると、

「んっ……」

 って声がでちゃうのも仕方がないし、声を無理に我満するのも諦める。


 試合中は一緒に居れないから、少しでも冬を感じていたいって思ってキスを

ねだってみたけど、いざキスをしちゃうと、このままずっとしていたいって思う。

 でも、冬のキスは気持ち良すぎるから、やり過ぎないようにしてねって思う。

 キスでイかされちゃったくらいだから。


 冬の顔が少し離れると、女子棟から悲鳴みたいな声が聞こえてくる。

 冬との世界に浸っている私は、そんなのお構いなしにウットリしたまま冬の顔を見つめて、もう1回って言うように目を閉じて、唇を突き出す。


 冬の舌が突き出した私の唇を舌先でゆっくり周回させていくと、私の唇は開き、熱くて甘い吐息を吐き出して。

「はぁ、んぅっ、あぁっ……」

 当然のように変な声も漏れてます。

 仕方ないじゃーんっ。

 我慢するの放棄したんだもんっ。


 半開きになった唇の上下を交互に啄む甘い蕩けるキスが始まると、このまま流されそうになる。

 もう、流されてるけど。

 流されたいと思ってるけど。


「あっ、んぅっ……」

 ウットリと瞳を潤ませて、冬の首に腕を巻き付け、すっかりキスを続ける体勢になって。

 甘ったるい声を出しながら、甘い甘い幸せなキスにどっぷりと浸る。


 ピクンと肩を起点に身体を跳ねさせ、すっかり気持ち良くなって感じている女の子状態。

 無防備なスカートの中はキュンキュンと疼き、蜜を溢れさせているから、本当の事だけど。


 でも、このままだと本当に危険だと頭では理解してるんだよ。

 そう思った時に、冬の顔がそっと離れて、名残惜しそうに冬の顔を見るけど、これ以上したら、またキスで……って冬も思ったのかな?

 それは当たりで、私の太腿がもぞって動く度に、クチュって音がスカートの中から聞こえてくるんだから。


「垂れてきたら、履いてないのバレるだろ?」

 あぁぁぁぁぁっん、だめぇ。

 そんな意地悪な事をセクシーな声で悪戯っぽく言われたら、無理です。

 チアスカートの裾下まで垂れそう。


 二人きりになるまで、試合が終わるまででいいから。

 今はまだだよ――。

 限界を超えたらダメなんだからっ――。

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