第22話 屋上の扉前3(膝で……)

 冬が顔を離すと、お互いの唇に糸が引いて、それを舌で絡み取ってから

ゴクンと喉仏を上下に動かすセクシーな動きに思わず見惚れてしまう。

 私もコクンと口内のお互いの唾液が混ざり合ったモノを飲み込む。


 キスでイかされた事が妙に恥ずかしくて、首から背中へと手を移動させ、

胸元に顔を埋めて

「はぁ……っん……ふ、ふゆのキス……えっち……」

 そんな甘ったるい声をどこから出してるの?って自分でも思うけど、勝手にそんな声と言い方になるんだもん。


 冬は耳元に向かって

「ん。瑞稀だって、洪水だろ」

「っ!?」

 ぁぁん。もうっ。

 そんな色っぽい声音で、私が溢れさせている事を指摘しないでよ。

 っていうか、やっぱり冬の肌に感じるくらいに、溢れさせていたんだと、思い知らされて。


「んんぅ……っ、冬が私だけって……証」

 自分でも何を言ってるんだろって思うけど、私なりの独占欲を伝えたつもり。

 冬は、嬉しそうに笑うけど

「そっか……オレも指とか、沢山、瑞稀に刻印されてたんだな」


 やぁぁぁっん……それは反則だよ。

 言わないでぇ。

 私は恥ずかしいんだよ。


 ――はい。

 私の証をいっぱいトロトロに溢れさせて、冬に付けさせて頂きました。

 冬に付けさせられました。


 晴れて、二人の関係性が変わって、蕩けるようなキスをされて、またまた、冬にイかされて。

 関係性は変わったけど、話している事は、ずっとこんな感じ。


 前からずっと、カレカノだったかのような錯覚も心地よくて。

 それに、こうして冬の脚を跨いで座って、会話している時間が特別に感じる。


 このまま時間が止まってもいいって思うくらいに、満たされていくのを感じて。

 私が無言でいると、冬も無言のまま私の背中に腕を回して、グイって力強くて優しく抱き締めてくれるのも好き。


 私がカノジョで嬉しい?

 なんて聞きたいけど、ゆっくりと時間が流れる感覚に浸っていたいし、恥ずかしいから言わないけど。


 どれくらい時間が経ったのか分からない。

 凄く長く感じるけど、実際は短い時間だったかも知れない。


「瑞稀、立てる?」

 優しい声音で私を気遣うような声音に、私の鼓膜は敏感に甘い刺激を感じ取る。

「んっ、まだ…こうしてたい……」

 立てるけど、まだ甘えていたいって内容を言いながら、顔を肩に埋めて、仕草でも伝える。


「ん。そっか。瑞稀を可愛がりたいけど、暫くこうしてるのも良いかもな」

 その悪戯が混ざった甘い声と内容に、トクンと心臓が跳ねてしまう。

 このままこうしていたいって思う心が、一気に揺れるのも分かる。


 可愛がりたいって……。

 うん、可愛がれたいから。

 キスしてハッピーエンドを迎えて終わりって、恋愛マンガや映画とかと違って、

二人の関係はここからスタートだもんね。


 肩から顔を離して、冬の耳元で

「もぅ、冬のえっち」

 頬を少しだけ膨らませて拗ねたように囁くけど、両肩に手を置いて、冬のゴツっとした肩に、下に向けて圧をかけるように力を入れ、ゆっくりと腰を浮かす。


 冬は私の仕草に合わせるようにして、私の腰に手を回してきてくれる。

 こんな風にして、身体を支えてくれるのも嬉しい。


 でも、これって、『こうしていたいけど可愛がって』って、言ってるようなモノだよね。

 それに気付いてしまうと、顔がまた火照りだして、そっと俯くけど、下から見上げてくる冬と視線があって、かなり恥ずかしい。


 冬ってこういう時に、「顔が赤くなってる」とか「何を期待してるの?」とか言わないんだよね。

 優しいけど、意地悪する時は意地悪になるよって、スイッチのオンとオフが、

その時の雰囲気に合わせて、切り替わっている感じ。


 腰を持つ手が少し私の身体を持ち上げてきて、私は冬の顔を見つめたまま膝立ちになると、

「っ!?」

 冬のズボンが視界に入って、私がどれだけ濡らしていたのか分かる変色具合に、恥ずかしくて、隠したくて、腰が下がりそうになるけど、冬の支える手の力の方向に従う。


 腰を軽くうねらせて、気付かないフリをするけど、

片膝を立てた冬の膝がスカートの中に入ってきて、私の開いた脚の付け根に膝を押し付けて来た。


「ぁっ……ああっんっ……」

 不意打ちの意地悪と甘い刺激に、へんな声が出てしまう。

 膝をグリグリと左右に動かしてきて、私は身体を無意識に前傾させる。


 冬の悪戯っ子のような顔が視界に入り、

「んんっ……もぅ……」

 拒む言葉は言わないで、ただ甘い声を漏らし、腰を揺らして、新たな刺激を受け入れる準備。


「ここにも瑞稀の印を……ね」

 うわーっ、そんな事をシレっと言う?

 ホントに意地悪だ。

 今から意地悪して感じさせるよって事だもんね。


 つまり……私が腰を浮かした瞬間から、可愛がられてたんだ。

「ぁぁっ、あぁぁんっ……」

 勝手に口から出てくる喘ぎ声が、あたしの返事。


 遠慮なく、私が冬のカノジョで、誰にもあげないって印を付けるよ。

 って、冬に付けさせられるって言った方が正解だろうけど――。

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