第9話 放課後前2(ノーパンに)

「……い、今?……ここで?」

 私の中では、すでに答えは出ているのだけど、前髪を指先で弄りながら、羞恥にまみれて潤んでいるだろう瞳で秋山を上目遣いで見つめ、『今は無理っ』と、言うように尋ね返す。


 口に出してから思ったけど、これってもう、ノーパンノーブラになる事はいいよ。って言ってるも同然だよね。


 秋山は、とっくに気付いていて、私がMだって知ってるから、意地悪さを押し出して言ってきたんだろうけど。


 うん。それって私には、すごく効果的なんだよ。

 それも秋山は気付いてるよね。


 そんな秋山は、考えることすら無く、すぐにコクンと頷き、秋山の指先が下へと動くと、紐がするするって解けていく感覚が凄く刺激的で、好きな男性に脱がされてるって思うと、堪らなくエッチで、否応なしに感度が上がるのが分かる。


「あっ…んっ」

 口から出るべくして出た『感じています』と、アピールするように甘ったるい声を零してしまう。

 自分のエッチな声を聞くのって、恥ずかしくて、だから自然と感度が更に上がって、もっと気持ち良くなりたいから、もっと声を出したくなる。


 ギリ丈だからお尻にスカートを敷けず、ひらひらさせたままのスカートの横側の裾から腰下へ伸びる、秋山の中指は器用に紐の絡まり解き、指先を肌に触れさせてなぞってくるのが気持ち良くて、腰が自然と揺れ動いてしまう。


 キョロキョロと周囲を見渡し口を手で覆って、右横の下を見れば、2本の水色の紐が垂れ落ちていて、それが視覚的に刺激をくれる。


「はっ……ふっ……」

 熱い息と周囲に聞かれたくない変な声が、どうしても零れてしまうけど、仕方ないと分かっていても、恥ずかしくて。


 秋山の大きな身体で、私たちの机の下で起こっている事はバレてしない様子に、少しだけ安心するけど、ピクンと身体が跳ねる度に少し身体を反らした時に見える私の顔は、真っ赤だろうし、きっと見れたくない表情になっていると思う。


『誰もこっちを見ないで』

 心の中でそう叫けば叫ぶほど、スリルさえも刺激に変わって、ドキドキが止まらない。


 秋山の顔がまたもや近づき、クスと楽しそうに笑って

「そっち側は『瑞稀』が。だって、何も言わないからさ。だから……半分はオレに脱がされて、半分は自分で脱いでって、両方にした。」


 艶のある声音で囁かれると、言われた内容よりも、私の事を『瑞稀』と呼んできた事に、思いっきり照れてしまう。

 もちろん、嬉しいし抱き付きたいくらい。


 もうね、好き人から好きな声音で、そんな事を言われたら、秋山の言う通りにするよ。

 状態になるのも当たり前。


 窓側の紐を自ら解き、少しお尻を浮かせて解かれたパンツを抜き取ろうとするも、

淫靡な音が足の付け根から聞こえ、これは恥ずかし過ぎるって、秋山の耳を塞ごうと両手を伸ばそうとした瞬間に、秋山の手に渡った私がさっきまで履いていた水色の紐パン。


 伸ばそうとした手で顔を覆い隠し、浮かしたお尻を戻すも、椅子の感触がお尻からダイレクトに伝わってきて、短か過ぎるスカートの中はノーパンなのだと、否応なしに意識されてくる。

 まるで『それが醍醐味だろ?』と、言ってくるように……。


 脱がされのか、自分で脱いだのか分からないパンツをマジマジと見る事無く、素早くズボンのポケットに押し込む秋山は、きっと優しいんだろうけど、凄く意地悪で。

 私の下着を秋山が管理しているような行動に、支配されていると感じて、被支配欲が満たされていくのを自覚する。


 こんなに恥ずかしい事をされて、嬉しいって思ってしまう事に呆れるけど、何だか私の好きな事ばかり、言ってくるし、してくるのだから、仕方ないよね。と思う。


 元来、視られるのが好きな私は、ムダ毛の処理は全てしているのだけど、もうすぐ秋山に視られると思うと、腹部の奥が更に熱を帯びて疼く。

 そして、無毛の恥ずかしい場所を視ても、秋山は引かないと確信している。

 引かないどころか、喜んでくれるとすら思うくらいに相性の良さを感じる。


「瑞稀のえっち」

 エッチな音が聞こえたよ。と、意識させてくるように、悪戯っぽく耳元で囁いてくる秋山の腕を「もうっ」と肘で小突いて

「ふ、『冬』がっ……い、いじわる……するからっ」


『すっかり濡れている事を否定しないで、濡れているのは意地悪するから』と……。

『授業中に私はMだって教えたでしょ?』と……。


 開き直って強がって見せるけど、恥ずかしくて俯いて照れを隠しまい、強がってみただけ。

 もちろん、冬にはバレバレだと思うし、バレバレでいいと思ってるけど。


 言いたくて仕方がなかった呼び方で、名前を呼んだから余計に恥ずかしさが増したのだけど、私から『冬』って呼ばれて、冬は嬉しい?


 担任の先生が教室に入ってきて、SHRが始まるものの、いつものように直ぐに終わった。


 だけど、単に起立して礼をするだけの動きは、今の私にとって、『単に』ではなくて、大冒険なんだよ。

 それに、二人だけの秘密を共有している事が、恥ずかしいのに、嬉しくて。

 少しお尻を突き出してお辞儀をすると、無防備なお尻に視線が突き刺さる感覚。


 チラと隣を見れば、案の定、冬の視線だった。

 冬は椅子を後ろに引くだけで、起立せずに座ったまま頭をさげていた。

 早速の意地悪に、私は翻弄されている事を意識させられる。


『ポケットに入れたモノを返して』なんて言って無いでしょ?

 スカートの丈もそのままでしょ?


 だって、冬だからだよ。

 大好きな男の子だからだよ。

 だから――放課後に期待してもいいよね。



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