第7話 授業中3(男子視点)
桃瀬の耳元に顔を寄せたまま、オレが囁いた言葉は
「やっぱり、無色透明だと思うけど?」
オレの本音だが、桃瀬の反応を試すように、少しだけ濁した。
途端に顔を真っ赤に染め上げ、首を左右に振ったりして、気を紛らわせるような仕草を見せる桃瀬は、何を思ったのだろう。
言った瞬間にドン引きされるとは思っていなかったが、こうも恥じらいなのか、何かを期待しているのか、こんな反応をされたら、オレだって何かを期待してしまうのは当たり前で。
その『何か』が桃瀬と同じだったらいいなと思う。
期待感が溢れ出ているバイアスがかかっているせいか、とにかく、反応を見ているだけでも可愛い。
そんな桃瀬を煽るように、再びオレは指でブラのストラップをなぞり、下着って上下だよ。と、指先の動きとスカートの中を見る視線とで伝える。
何か悶えるように首を左右に振ってくる桃瀬の耳にオレの唇が触れ、「んっ」と甘い声を漏らしては、慌てたように口を手で塞ぐ仕草。
それって、声が出たからって意味よりも、声が出ちゃうって感じに見える。
だから、意地悪く唇からそっと舌を出して、恥ずかしそうに首を横に振りながら、オレの方へと顔を寄せてくる耳に舌先を触れさせ、愛でるように舐めてみた。
口を手で覆っているせいで、くぐもってはいるけど、桃瀬の甘い声と荒い息使いは、先程より頻度が多くなり、こうして授業中に桃瀬の羞恥心を煽りながら意地悪しているオレと、ことごとく反応している好きな女子。
この構図がオレにとっては堪らないものだ。
表情を隠すように俯く桃瀬の手が口から離れ、声が出ないよう我慢しているのか、
唇を強く結んでいる様も、何とも言えない色気があって、オレの心を擽ってくる。
その口から離した手が教科書に伸び、オレの教科書に何やら書いているのを見つめ
戻ってきた教科書に視線を移すと、丸っこい文字の「えっち」「ヘンタイ」「スケスケとか無理」と書かれているのが見え、今すぐにでも、桃瀬の甘い声を教室内に響かせたくなる。
何かを書いている時に、静観していたのが、無駄な努力になりそうな気さえする。
とは言え、太腿を閉じて執拗に太腿を擦り合わせているのを見れば、あの場面でオレが何らかのアクションを起こすと、本当に声を響かせた確率は相当に高いと感じる。
悪戯な表情を作り、チラと桃瀬を見てから、「スケスケとか無理」の文字の上に、
大きくバツ印をつけては、その隣に「ノーパンノーブラ」と、書き足して勘違いしているのか、分かっていて誤魔化していたのか分からないけど、『下着は無し』なのだと明確にして桃瀬の反応を伺う。
両手で顔を覆い隠して、オレと反対側にある窓の方に顔を向ける桃瀬につられて、オレも窓の方に視線を移すと、いい感じに風のせいで木々が左右に揺れている景色が視界に映る。
スケスケの下着だとしても、ノーパンノーブラだとしても、この景色を見て風を意識してしまうのはオレだけじゃないだろう。
オレの脳裏には、ツンと尖ってブラウスを押し上げる透けて見える乳首と、風のせいでめくれあがった短いスカートの中は、全くの無防備で、それを視ているオレの視線を感じ取り、羞恥にまみれたような桃瀬の表情から飛び出す声は、「きゃー」とかの悲鳴を上げながらスカートを抑えるのではなく、甘ったるい「あんっ」という声をだ出しても、オレに視られている状態のままスカートを手で抑えない姿と、音声さえハッキリとイメージできる。
もっと言えば、今みたいにモゾモゾと太腿を擦り合わせるように動かしている様まで想像できるし、それがオレの想像で終わらないような感覚がある。
窓に向けていた桃瀬の顔が、俯いたまま教科書に向かい、顔を覆っていた手が
離れて教科書に伸びてくれば、視界に飛び込んでくるのは、オレが想像していたような、恥じらいを強く押し出した表情で、唇は半開きになっていて、浅い息を吐き出す様が淫靡に映る。
間違いなく、桃瀬も何かを意識して想像したのだろう。
戻って来た教科書を見れば、「ノーパンノーブラ」の文字の隣に、可愛く「ドS」とだけ書いてくるのも可愛くて可愛くて……。
だって、「無理」じゃなくて、むしろノーパンノーブラならいいよ。と、言っているように感じるから。
すぐさま、教科書を手元に引き寄せ、桃瀬に向かって矢印を書き、「ドM」と付け足して反撃する。
「ドM」の字を見た桃瀬が、口に手を当てて、「何で分かったの?」と云うような仕草をすることに、ウットリとしてしまう。
これはもう、オレと桃瀬は一蓮托生と言うべきか、これから何も起こらない方が、おかしい関係になる予兆だと思う。
「ドM」の「ド」の部分にだけ訂正を入れるのが、雄弁に桃瀬もオレと同じことを
考えていると物語っている。
オレも「ドS」の「ド」の部分だけにバツ印を書き足して、桃瀬に見せると視線が合った。
桃瀬の瞳は、後で下着をちゃんと脱ぐからね。と、言っているように映り、オレは満足そうな笑顔を作り、ちゃんと意地悪して可愛がるからね。と、伝えるように桃瀬の顔を見つめた――。
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