第80話

………あ、そっか。

きっとみんなで、私を騙してたんだね。


…悪い冗談。


考えてみればそうだよ、こんなに私の周りにばかり悪いことがある訳なんてないし。

もしかしたら2041年っていうのも嘘で、光希だってちゃんと生きてたりするんでしょ…。


で、今そっと後ろから出てきて、そして私を抱きしめて、


『騙してごめんな!ほら、紗織。やっぱすっかり騙されたろ?いなくなってみて、俺のありがたみが分かったか!』


なぁんて言っちゃったりするつもりなんでしょ。


………………。


……うつむき、涙を流しながら私は笑っていた。

だって、顔を上げたら笑ったみんながいるんだもん。

きっとそう、そうに違いない。

悪趣味すぎるブラックなジョークだったけど、怒らないからね。


泣きながら、笑いながら顔を上げた私。


そして目に映る、綾ちゃんの姿。


こうして私が都合よく想像したものは、当たり前のように崩れ去り、一気に現実へと引き戻された。


逃げられない。

私は逃げられないんだ。

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