第79話

おばあちゃんの家に上がり、沈黙のまま廊下を進む私達。


そもそも12年会っていないというのだけでも怖いのに、今の状況が分からず、会うのが凄く不安…。

どのくらい悪いんだろう…。

あの明るくて元気な綾ちゃんはもういないのだろうか。


おばあちゃんの家の廊下は風通しが良くて涼しいけど、普通に歩くのがまだ困難な私は結構汗をかいていた。


綾ちゃんのいる部屋までの距離は、そんなにない。

それなのに、今の私の歩行スピードではものすごく時間がかかった。

そしてその間、悪い想像ばかりしてしまい、胸がぎゅーっと痛む。


極度の緊張で少し潤んだ目、噛み締めた唇。

口だけでする呼吸は浅くなり、心臓はさらに鼓動を早めていく。


しばらく歩き、やっとたどり着いた綾ちゃんのいる部屋の前。

いよいよ対面の時がきて、ドアは開かれた…。


開いた扉の向こうの現実。

すぐには直視する勇気はなく、私はうつむきながら部屋へと入っていった。



「あっ、さーちゃーん!やっと目覚めたんだねー!心配したんだからっ」


「……!?え?…綾ちゃん?」



うつむく私の耳には、ある意味予想外の言葉が飛び込んできた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る