第62話

「……!」



…うん、そうだよ、そう。

私は二十歳。


私の中で諦めて遠ざけようとしたその事を、イチハさんは拾ってくれた。

…ちょっと嬉しい。



「じゃ、自称ハタチって事にしときます」


「はははーっ!それでいいじゃん。…っつうか、実際もっと若く見えるよね。自称って言うんなら17歳くらいにしときなよ」


「コラっ!言い過ぎ、言い過ぎーっ!」



そんな冗談もなんだかちょっと心地良く、ふと自然に笑顔がこぼれ始めていた。



「あー、そうそう、話は変わるけど、実は俺、軽くだけど手相見れるんだよねー。どう?見てあげよっか?」



なんの脈絡もなく突然言われて驚いたけど、断る理由も特にない。



「いいですよー。はい」



手相と言えば左手のような気がして、無意識に近い感じで左手を差し出した。



「あーごめんごめん、俺は右手で見るんだよね」



そう言われて、右手を差し出す。


こんな暗いとこで分かるのかなーなんて思いながら、じっと結果を待つ私。

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