第53話

医師と看護師さんの指示に従い、カプセルのようなところに入り、様々な機器が付けられていく。

最後に厳重なチェックも終わり、フタはゆっくりと重く閉じられた。

カプセル内の目の前の小窓から、隣の部屋にいるみんなの顔が少しだけ見えた。


覚悟を決めた私は、『…看取られながら死ぬ時って、きっとこんな感じなんだろうなぁ…』なんて思ってしまう。


さあ、いよいよだ。

…ん?あれ?はっきりとは見えないけど、光希が…見間違いでなければ、なんだか泣いているみたいにみえるよ。

絶対に泣かないとか豪語してたのにね、確か。

次に逢ったら日頃の仕返しとばかりにつっこんでやるんだから。


『ピピピピ…』と、始まりを告げる小さなアラーム音が聞こえる。

さっき飲んだ薬のせいか、気持ちの高ぶりは、もうない。


ただ、いつも通りに眠りにつくように…

ゆっくりと、静かに…

安らかに、清らかな眠りに導かれてゆく………


『じゃ、また…ね…』


薄れゆく意識の中、私は小さな声でつぶやいた。



…さよなら、みんな。

…さよなら、…2029年と二十歳の私。

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