第51話
…2029年、10月25日。
…ついに来てしまったこの日。
今は9時半で、10時にはいよいよコールドスリープの処置室へ行かなければならない。
コールドスリープまでの、わずか30分ほどの面会時間。
今日は父、母、綾音、光希…さらにはくーちゃんと、ユミカも来てくれた。
外は、悔しいほどに快晴。
「あー、こんな日は山とか公園にでも行って、お弁当食べたいね」
病室から見える景色が眩しすぎて、私は思わずそんなことを口にしてみる。
いろいろ考え過ぎているからか、緊張と不安を足して二で割った感じの苦しさ…。
「退院したら、またみんなでバーベキューに行こうよ。今度は川に突き落としたりしないからさ!ははは」
…そうだよ!
夏に行ったバーベキューは、悪乗りした光希に川に無理矢理投げこまれて、服はビショビショになるし化粧はぐちゃぐちゃになるしで大変だった…。
あの時は本気で怒って本気で泣いて…いい思い出は、まるでない。
「いや、光希とバーベキューはもういいです」
光希は『なんで?楽しかったじゃん』みたいな顔をしてるけど、一緒に行っていたユミカとくーちゃんは苦笑いだ。
楽しくも他愛のない話を重ね、最後の時はあっという間に過ぎてゆく。
大好きな家族、友人、恋人に囲まれて、シアワセな気持ちが少しずつわたしの心に注がれる。
みんな、ありがとね。
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