第46話

「…あれ?紗織…?もしもーし…。…電話切られちゃったかな?」



長い沈黙に耐え切れず、光希は言葉を発した。

本気じゃあないって…冗談だってのはもちろん分かってる。

いつもなら間違いなく突っ込むのに、ただ黙っている今の私の状態も、光希は分かってるんだよね…きっと。

…なんか余裕ぶられてる感じで悔しいけど、残念ながら嬉しさが優る。


…光希に逢えるんだ…!!


そう思い、ちょっと気が緩んだ隙をついて、涙はさらに溢れ出す。



「…ぅ…。んくっ……。ょか…った…、こぅ……きぃー」



隣に運転する母がいるのも忘れ、言葉にならない言葉とともに、流れ落ちる涙は止まらない。



「心配かけたよね。不安にさせたね。紗織…、ホントにごめんな」


「…んー……、だぃじょう…ぶ……だから…」


「明日の夕方の便でこっちを出る予定だから、…えーっと…、時差はあるけどとりあえず、24日の午後には空港に着くと思うんだ。そしたらすぐにそっちに向かうからね」


「…ぅん…、ゎかったょ…。待ってるから…ね」


「おう!待ってろ!…あぁー、それにしても25日までに日本に帰れなかったら、俺、相当恨まれて、この事一生言われたんだろうなぁ…。ははっ、危ねっ!」


「…だね。…間違いないよ…。…まぁ24、25は学校休んででもずっと一緒にいてよね。…これ、拒否権ないから。強制ね」



なんとか持ち直して強気に出るも、しっかりかなりの鼻声だった。



「はーい、わっかりましたよー。じゃ、また明後日な」


「うん、じゃ、またね!」



…あれっ?悪い方の話は??


電話を切った直後に思い出したけど、わざわざまたかけ直してまで悪い話を聞くのもなぁーっと思い、少し悩んだけど今日は忘れる事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る