第45話

病院へと向かう車の中、走り始めてわずか数分後、携帯から聞き慣れたメロディーが流れる。


…光希だ!!


とりあえず、何も考えずに電話に出る。



「…あ、今、大丈夫?」


「…うん。もう家を出て、病院に向かってるとこだよ」


「そっか。そっちはもう月曜かぁ。あ、そうそう、良い知らせと悪い知らせがあるんだけど…どっちから聞きたい?」



…どうしよう。


きっと悪い知らせってのは、25日に間に合わないとかっていう内容で間違いないんだろうなぁ。

…逆に良い知らせって…なんなんだろう。見当もつかない。


…ここはあえて…



「…良い知らせからにするっ!」


「…おお!おいしい物はとっといて、後から食べる派の紗織にしちゃあ意外だなっ!」


「いいのいいの。ちなみに良い話がたいした事なかったら、その後の悪い話は聞きたくなくなっちゃうから、すぐに無言で電話切るかもだからね」


「あははっ。大丈夫だと思うけど。ちなみに良い話ってのは、なんとか日本に帰れそうって事。飛行機も仮にだけど予約が取れて、明後日くらいには帰れそうなんだ。紗織のコールドスリープの前日には間に合いそうだよ。…あ、紗織基準でこれがたいして良い話じゃないってなって、このまま電話切られたりしたら…ショックだなぁ~…ははは」



一度は諦めていた、光希と過ごす最後の時。

だめだろうなぁーって諦めて期待していなかった分、めちゃくちゃ嬉しかった。

嬉しすぎて涙が溢れそうになりつつも、思わずにやっとする。


そんな私の目の前をただただ流れてゆく景色は、だんだん滲んで見えなくなっていった。

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