第40話

「じゃ、またね」



にっこり笑っていつも通りのこの場面。



「じゃ、頑張ってくるんだよ。退院したらすぐに教えてね。二年分の誕生会もしてあげるからね」


「ありがとう、ユミカ。楽しみにしてるね」


「退院したら、温泉旅行だからねー。その頃にはまた積もる話もたくさんあると思うしさぁー」


「うんっ、そうだね」


「じゃ、また来週のコールドスリープの日に二人で来るからね」


「ユミカ、わざわざ休みとってくれたんだよね。ありがとね」


「あ、私も一応学校休んで来るんだけどぉー」


「分かってるって。くーちゃんも、ホントにありがとう」



いつも通りに楽しい時は過ぎ、いつも通りに終わりを告げる。

何度も振り返りながら、『バイバイ』って手を振りながら歩いていく。


そんな二人の後ろ姿が階段に差し掛かり、そして見えなくなったところで、今までのお別れの時とは違った虚しさに支配される。


そんな感情を抑えながら、『またね』って心の中でつぶやいて、家へと帰っていったんだ。


駅からの帰り道。

てくてくと歩きながら、ゆっくりと空を見上げる。

昔は今ほど高いビルやマンションなんかもなかったのになぁ。

ふと気付けば、空は高く、狭くなっていた。


二年後にはどうなっているのかな…。


ついに入院まであと二日。

そして明日は光希と入院前最後のデート。


最近はずっと家にこもりっぱなしだったし、四日振りに逢うからすっごい楽しみ。

記念日デートも流れちゃったから、なんだか色んな意味で久しぶりだなぁ。


ただその反面、これを最後に明後日から入院生活となり、わたしは二年間の眠りにつく…って寂しさも同時に訪れる。


でも明日はとにかく全てを忘れて楽しむんだ。

絶対それが一番なはずだから。

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