第36話

「あ、そうだ、紗織。やっと実現しそうだった再来月の年末年越し温泉旅行、結局行けないね。せっかくみんなそれぞれの彼氏を頑張って説得したのに残念だね」


「そうだね、ごめん…」


「あー、そういう意味じゃなくてさ…ごめんごめん!紗織がよくなってからまた行けばいいんだし、気にしないでよ。あ、そうそう、治療とか、今後はどんな感じになるの?」


「ん、あー、とりあえず現在の医学では不治の病ってやつで、今は治せないんだ。だからコールドスリープで…まぁ簡単に言うと冬眠状態みたくなって、治療出来る体制が整う二年後に目覚めさせてもらって治療…って感じになるんだ」



少しはショックで暗いムードになっちゃったりするのかと思ったけど…

そんな私の心配をよそに、二人は意外にも平然としていた。



「あー、そっかぁ。しばらく会えなくなっちゃうんだねー」



…あれ?くーちゃん、それだけ?



「紗織、まぁほら、退院したらまた集まって、ガンガン飲み明かそうよ」



…って。

あー、湿っぽい涙のお別れになっちゃったら嫌だなぁ~って、そんな心配してたけど、まったくいらなかったみたい。


二人のおかげで、今夜だけは全部忘れて楽しく過ごせそうだよ。

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