第25話

「さーちゃーん!」



そんなことを考えていると、ちょうど綾音が帰って来た。



「あー、いらっしゃい。コーキさん、来てたんだー」


「おう」


「あ、さーちゃん、検査の結果…お父さんから聞いちゃったんだけど…」



そう言って綾音は、悔しさや悲しみ、寂しさなどを混ぜたような複雑な表情をしていた。

そしてちらりと光希の方を見てからこちらに向き直す。



『コーキさんはこの話を知ってるの?』



多分そんな意味だろう。

私は無言で頷いた。



「そか、ごめん、また後で話そうね」



綾音はそう言い残し、残りも少ない私と光希との時間を気づかってか、にこりと笑って部屋を出ていった。


そしてその後、しばらく沈黙は続いた。



「…ねえ光希。私、入院する前に、この前もらったプラネタリウムが見たい。元気になってからっていう約束は破っちゃう感じになるけど…」


「そうだね。うん…いいよ。ただ、ちゃんと元気になって帰ってくるっていう約束をしてくれるなら…ね」


「…うん、わかった。約束するよ」



とりあえず…あくまでとりあえずだけど、光希とのお別れ。

入院の前日に、最後のデートをする約束をした。


その日の夜に、私の部屋で一緒にプラネタリウムを見る約束もした。


もちろん体調自体が悪いから、遠出も長時間出掛けることも出来ないけど…それでもいいよね、一緒にいれる時間があれば。

その日はいっぱい話をしようね。

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