第26話

「そうなんだよ、あいつマジひでーよな!」


「あはは!まぁそんなんしちゃうのも、タクちゃんらしいよね!」



気付けば最後の方は、普通の会話になっていた。

いつも通りの笑顔の私がいる。

すっかり光希のペースにはめられてしまっていたみたい。


「あー、もう19時か。なんかいい匂いしてきたし、そろそろご飯みたいだから帰るよ。じゃ、またな」


「んー、またね」



…あらためて見つめ合い、そして軽くキスをする。


いつも通りの別れの場面。

そんな一瞬のキスの最中にも、こんな事もあと何回できるのかなぁ…なんて考えてしまう。


…でも、考えてみればこれは永遠の別れなんかではないし、当の私からすれば、眠ってしまえば一瞬に感じるような二年後の未来。

二年も入院するとはいえ、闘病生活を送る訳でもないから、きっと本当に寂しくて辛いのは…私じゃない。


送り出してくれるみんなに、ちゃんと笑顔で明るいお別れをしなきゃいけないんだ。

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