第21話
帰りの車の中。
「二年なんてあっという間だし、きっとちゃんと治るから大丈夫。みんなで紗織の退院を願って、祈って待ってるから。あ、紗織が好きな俳優が出るドラマをやるときは、全部録っとくからなっ!」
と、お父さんは励ましてくれた。
お母さんは、さみしそうな顔でそっと笑うだけだった。
私は一ヶ月に一度くらい、お母さんと二人で買い物に行っている。
お父さんには内緒で、ちょっぴりお洒落なお店でランチを食べて、半日かけてお店を巡り、夕方に帰るんだ。
…お母さん、ごめんね。
そんな楽しいお出かけも、これから二年間は出来なくなっちゃうね。
家に着いたのは、お昼過ぎ。
「紗織、お昼は何にする?紗織の好きな、焼きそばもあるけど」
朝ごはんはちゃんと食べたし、なんだか食欲がないよ。
「んー、私はお腹空いてないから、お昼はいいや。ごめんねー」
少し一人になりたかった。
なんだかなんにもやる気が起きない。
つけたテレビも開いた雑誌も、内容が全く頭に入ってこない。
仕方なく、気持ちを落ち着かせるために、ちょっと寝ることにした。
とりあえずベッドに入り、光希にLINEをする。
『あとで会える?』
すぐに既読になり、返信が来た。
『おー、大丈夫だよ』
『帰るとき、LINEか電話するよ』
今日病院に行く事は伝えてあったから、心配してくれてるだろうな。
逢ったら何から話そうか。
伝えなくちゃいけない事がたくさんあるから、ちゃんと整理しておかなくちゃ。
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