第9話
…光希は身長179センチ。
私は150センチ。
ちいさな私は完全に取り囲まれるかのように、光希の体に包まれた。
これだけ長い時間を一緒に過ごしてきた私達だったけど、今までの人生の中で一番近い距離。
そしてその二人の距離は、さらに近づく…。
…初めてのキス。
嬉しさと緊張で、固く閉じた目。
肩にも力が入り、なんだか少し震えちゃうよ…。
恥ずかしい…。
そしてそのまま数分、無言のままの甘く淡い時は流れた。
…しばらくして、ふと何かを思い出したかのように、光希は私の耳元でこう言った。
「紗織……あのさ」
その次の言葉が届くまでのほんの1、2秒の間に、いろんな言葉を想像してしまう。
もしかしたら『好きだよ!』とか言われるのかな…。
いやいや、光希のことだから、『紗織ってやっぱバカだなぁ』とか言ってくるのかも。
そんな風にぐるぐると考えていると、意外とも言える言葉が私の耳に飛び込んだ。
「紗織ってホントにかわいいなぁ!さっきのって天然だろ!?」
一瞬おーって思ったけど、なんか褒められているのか、けなされているのか。
…でも、かわいいとか光希に言われた記憶はほとんど無いし、もちろん嫌な気はしない。
「なによー、あれでも一応真面目に答えたつもりだよー」
ただ、天然とか言われて悔しいから、心配させてやろうかとちょっぴり怒って拗ねてみる私。
だけど、その後に優しく頭をぽんぽんってされて撫でられたから、また涙が出てきてしまった。
なんか告白を待ってたのがバレバレみたいな感じになっちゃって悔しいけど…まぁいっか。
こんな何気ない会話だったけど、この日からあらためてスイッチが入ったのを感じた。
お互い意外と恥ずかしがり屋だから、なんだか遠回しな告白と、冗談混じりみたいな返事だったけど…
これはこれで、私達らしかったよね。
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