第81話

「それって誰に言ってるんですか?」



…いけないと思いつつも、少し冷たい言葉で切り返してしまった。


言い過ぎたかな?って思ったそんな言葉も、なぜか今の翔瑠さんにはうまく届いていないようだ。



「俺はずっとずっと好きだった。だけど、遠くから見てるだけというか、叶わぬ恋だと諦めなきゃいけなかった。俺とは立場が違いすぎて、どうにもできない壁があったから。でもさ、願いは叶うんだ。想いは届くんだ」



あれ?

夢の中の女の子とは、恋人同士だったとか言ってなかったっけ?

混乱しているのか、なんだか辻褄が合わないことを言っている気がする。


そして冷静に一歩引いた私は、客観的に理解している。

これは私じゃない、夢の中のあの子へと向けられた言葉だって事に。



でも、なんだろう。


状況と勢いに流されている訳じゃなく、違和感を感じずに受け入れてしまいそうな自分がいる。


記憶を失っているのは翔瑠さんのはずだけど、私も何かを忘れているような、そんな気がした。

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