第46話


……あ!!



人間の脳ってどんな作りなんだろうな。

その夢がきっかけになったのかは分からないけど、急に思い出した。


…うん、そうだ。


今年の始めに痴漢に遭った時。

あの時に痴漢を捕まえてくれたのが、そう、翔瑠さんだ。間違いない。



ほんとにほんとに、私ってバカだなぁ…。

なんであの場で思い出せなかったんだろう。


前に会った時はスーツだったし、そのせいか雰囲気は昨日のとは少し違う感じだったけど、あれは絶対に翔瑠さんだ。

あの時は、名前も告げずに去っていったんだった。


そう、きちんとお礼も言えなかったから、もう一度逢いたいって思ってて…しばらく同じ電車、同じ車両に乗り続けたんだけど、あれから結局逢えなくて。



強く強く、逢いたいと願った想いは叶わなくて……。


………。




あぁ…そうか、叶ったんだ…。

…私がそれを見落としただけ。

もうとにかく後悔しかない。


そんな負の感情の中の、深い深い心の底。

漆黒の暗闇の中にある唯一の光、桜色のちいさなカケラ。

私はその存在に気づいてしまい、今はもう涙しか出ないんだ。

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