第43話

…あれ?


あ…うーん……。



よく見ると、私のほうも翔瑠さんにはどこかで会ったことがあるような気がしてきた…。

ただ、どこでだったかは全く思い出せない。


友達の友達だったとか、どこかで見かけたことがあるとか…かな?



「ねぇ璃咲。私もさ、なんかあの人見たことあるんだけど。なんだか懐かしい気もするんだよねー。バイトのさ、お店の常連さんとかでいたっけ?」


「んー、私、人の顔は結構忘れないんだ。私は会った記憶がないから、多分お客さんじゃないよ」


「そっかー」



なんだろう。

もやもやするなー。



「まぁさ、お互い思い出さないならその程度のもんなのかもな。どっかで見かけただけとかさ。あー、引き留めて悪かったな。じゃ、気を付けて帰れよー」



翔瑠さんはそう言うと、くるりと回って駅とは逆の方向に歩いて行った。


その遠ざかる後ろ姿を見ながら、こっちの名前や連絡先を教えるべきなんじゃないかと思い、追いかけたい衝動に駆られた。


まだ間に合う、まだ間に合う…。

…でも、私にはそんな勇気はない。


もう二度と会えないかも…と思いつつも、そこからの一歩はとても重く、私はただただ見えなくなっていくのを待つだけだった。

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