第43話
…あれ?
あ…うーん……。
よく見ると、私のほうも翔瑠さんにはどこかで会ったことがあるような気がしてきた…。
ただ、どこでだったかは全く思い出せない。
友達の友達だったとか、どこかで見かけたことがあるとか…かな?
「ねぇ璃咲。私もさ、なんかあの人見たことあるんだけど。なんだか懐かしい気もするんだよねー。バイトのさ、お店の常連さんとかでいたっけ?」
「んー、私、人の顔は結構忘れないんだ。私は会った記憶がないから、多分お客さんじゃないよ」
「そっかー」
なんだろう。
もやもやするなー。
「まぁさ、お互い思い出さないならその程度のもんなのかもな。どっかで見かけただけとかさ。あー、引き留めて悪かったな。じゃ、気を付けて帰れよー」
翔瑠さんはそう言うと、くるりと回って駅とは逆の方向に歩いて行った。
その遠ざかる後ろ姿を見ながら、こっちの名前や連絡先を教えるべきなんじゃないかと思い、追いかけたい衝動に駆られた。
まだ間に合う、まだ間に合う…。
…でも、私にはそんな勇気はない。
もう二度と会えないかも…と思いつつも、そこからの一歩はとても重く、私はただただ見えなくなっていくのを待つだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます