第Ⅰ章 第25話

「鳴海に麻薬を卸した事は事実だが、鳴海が起こした事件は俺達には関与していない」

黒峰は、再度しらばっくれた。


「そうやってしらばっくれて、言い逃れした所で無駄だ。お前達は麻薬を抜きにしても罪を犯しているのだからな」

恭哉は怒りを向けた。「・・・・」

黒峰は恭哉の怒りの気迫に当てられたのか、黙り込んだ。


「黒峰、最後に聞きたい事がある」

恭哉はそう前置きした。「な、何だ」

黒峰はそう言った。


「10件の麻薬事件の内、未解決の1件は、前に黒峰が行った麻薬事件と酷似していた。あの紅茶はまだ、ここにあるのか?」

恭哉は驚きの言葉を黒峰に言い放った。


「!・・・な、何の事だ・・・」

黒峰は最後まで言葉を紡ぐ前に恭哉に胸倉を掴まれていた。


「・・・いい加減に・・・しろ・・・。しらばっくれるのも良い加減にしろ!


俺は、全部、覚えている。お前達の罪を。俺がまだ、警視庁捜査一課に居た時、黒峰、お前達は、数年前に女性を標的にし、紅茶に麻薬を入れて販売しただろう。


あれは、摘発時に全て、お前達自身が証拠隠滅を図っただろう!証拠隠滅した筈のその麻薬は、お前が鳴海に売り捌いたんだろう!答えろ!黒峰」

恭哉は普段、私の前で見せない程の怒りを黒峰に向けた。


それ程、恭哉は、女性を麻薬の標的にした事を許せないのだろう。だから、ここまでの怒りを黒峰に向けるのだろう。


それ故、狂犬と言える程だ。

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