第Ⅰ章 第14話
流石の恭哉は絶句していた。
「でも、10件の内、9件は解決済みだが、一件だけ未解決のままの事件がある」
紫桜さんはそう答えた。「一件?その一件って?」
恭哉はそう聞いた。
「恭哉さんのお母さんとお姉さんが亡くなった通り魔殺人の裏に埋もれた薬害事件と似た薬害事件を鳴海が高校生頃に起こした事件は、まだ未解決のままだ」
紫桜さんはそう言った。
「あの薬害事件と似たか・・・」
そう呟く恭哉の口調はさっきまでの覇気が薄れていた。
私と恭哉が結婚する前に8年前の大規模な通り魔殺人事件で、恭哉は実の母親とお姉さんを亡くしている。
その裏で起きた薬物使用者による殺傷事件は、麻薬取締官の中で薬物使用者による殺傷事件の中でも最悪と呼ばれているらしい。
「悪い、恭哉さんにとってはあの通り魔殺人の事は禁句だったな」
紫桜さんは申し訳なさそうにそう言った。
「いや・・・平気だ。悪い・・・。それで、俺の事件の裏に埋もれた薬害事件と似た薬害事件の詳細を教えてくれないか?」
恭哉は紫桜さんにそう謝罪しながら言った。
「それは構わないんだが・・・少し、待ってくれ。その事件の捜査資料を持ってくる」
そう言い、紫桜さんは、部屋から出て行った。
「・・・恭哉、その・・・大丈夫?」
私は、恐る恐る恭哉にそう聞いた。
「あぁ、悪い・・・優姫にも気を遣わせたな・・。母さんと姉さんの事件は解決したのに・・・。どうも話に出されるとな・・・」
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