第32話

「そうですか・・・。では、彼の友人に心当たりは有りませんか?」

私は深雪さんにそう聞いた。


「そうですね。あ・・・一人、居ます。彼は確か同じ職場の藤木直哉さんと言う方です」

深雪さんはそう答えた。


「そうですか・・・。ありがとうございます」


「深雪さん、酷い事を聞きますが、答えて頂けますか?雪菜さんからもお話を聞きましたが、貴女の旦那さんは、かなりの癇癪持ちだとお聞きしましたが、それは事実ですか?」

私は深雪さんにそう聞いた。


「ええ、その通りです。それが裕也にまで遺伝してしまったんです」

深雪さんはそう答えた。


「深雪さんは、裕也さんの暴力が家族だけではなく、彼の恋人であった黒瀬香恋さんやその友人である雪代沙織さんにまで及んでいる事はご存知でしたか?」

私はそう聞いた。「いいえ、知りません。今、刑事さんから聞きました」

深雪さんは本当に何も知らないらしい。


「そうですか・・・。分かりました。それでは失礼致します。色々、お話頂けてありがとうございます」

私はそう言った。


「いいえ。こちらこそ、申し訳ありません」

深雪さんは私に謝った。


「いいえ、謝らないで下さい。・・・それでは、失礼致します」

私は深雪さんに頭を下げて、深雪さんの病室を後にした。

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