第20話
――朝。
俺は、外のただならぬ雰囲気に気圧されながらドアを開けた。
そこには、正規兵十数名と、馬車が一台。皇室の紋章入り。
「リルベルド・ディーマス」
兵士の隊長さんらしき男が、俺を見て言う。
「ジョーセッグ卿の養子となってもらう」
「……は?」
ジョーセッグってのは、かなりの有力貴族だ。何でンなもんが、平民の俺を養子に?
「断る」
「皇族命令だ。逆らうことは許されん」
間髪入れずに言うと、これまた間髪入れずに言ってくる。
「……皇族?」
「私です」
馬車から一人の美女が降りてくる。……って、おい。
「既に、貴方のお父様とお母様も『保護』いたしました。従っていただけますわよね? ディーマス様?」
にっこりと、恐い笑顔を浮かべて。
「権力を振りかざせと、貴方はそう仰いました。ですから、先ずは貴方に振りかざさせていただきます」
人懐っこい、柔らかな笑顔。
「あなたは今日から、ジョーセッグ様ですわ」
……じ、……じ、
「冗談じゃねぇえっ!」
「追いなさい!」
逃げる俺を、兵士が追ってくる。
無論、延々と逃げられるわけじゃない。親父とお袋も捕まってる。それでも俺は逃げたかった。
……これが、俺の責任、俺が選んだ道なのだとしても。
あの日の酒場での過ちを、俺は痛烈に呪っていた。
―― Fin ――
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