6,ジ・インペリアル・プリンセス

第17話

6、ジ・インペリアル・プリンセス



「嘘を言うなッ!!」


 セザーニが怒鳴る。

 洞窟の真ん前。奴はそこで、俺たちが出てくるのを待ってやがったってわけだ。


「お前らがいきなり出てきたのは見たぞ! 見つけたのだろう!?

 封夢の玉を!!」


「だから、それを守る蒼穹の一族に勝てなかったって何遍言わせるんだよ?」


「だったら、どうしてお前らは無事なんだ!?」


 と、そこまで言ってセザーニの奴は、俺たちの様相に目をやった。そして、

「……そうか。玉を使ったな?」

 意地悪く言う。

「玉を使って、生き延びたのだろう? 瀕死の重傷から」


 レンは言うまでも無く、俺たちはリーリアを除いて、酷い有様だ。それが、五体満足で立っている。

 ……そういう結論に達したか。


 ざっ! 兵士が俺たちを取り囲む。


「玉を持っている筈……いや、持っていなくてもどこかに隠した筈だ!

 捕らえて奪え! 吐かせろ!」


 俺たちが臨戦態勢を取ると、


「いいのかなぁ?」

 嫌な笑い。

「このセザーニ伯爵の指名手配犯になっても?」


 ……この外道が。


 この状況を打開する道は二つ。


 ひとつ。セザーニもろとも全て葬る。

 ひとつ。俺が懐の中のものを使う。


 前者を選べば、俺たちは間違いなくお尋ね者だ。でも、後者を選ぶとリーリアは……。


 ……………………


 ……許せ。リーリア。


 俺は、懐に手を入れた。その時。


「いい加減になさい! セザーニ!」


 威厳ある声で言ったのは、リーリアだった。一歩前に進み出ると、


「兵を退きなさい!」


「小娘が何を偉そうに!」


「黙りなさい!」


 リーリアは、弓の端に結わえたリボンを解いた。そこにあったのは――


「この私、リーリアント・ジュレア・メルフィースの言葉が聞けぬと言うのですか!?」


 弓に彫り込まれていたのは、皇室の紋章。たじろぐセザーニ。


「……め、メルフィース……? ま。ば、……」


「我が名の下に命じさせていただきます。今すぐ兵を退きなさい」


「ええい! 小娘の戯言に惑わされるな!」

 兵士を叱咤するセザーニ。今度は俺が前に出た。


 懐から取り出した、銀のレリーフを見せながら。

 名前も知らない皇女様は無視できても、これは無視できねーだろ。


 皇室の紋章の上に、盾の意匠。皇室専属警備のフォールッティング・ナイツの証だ。ついでに俺の名前が彫り込まれている。


「これが偽物か本物か、分かるな?

 んで? フォールッティング・ナイツが守るのは何方様か、それも分かるな?

 この方がどんなお方か、分かるな?」


 蒼白な顔で、セザーニたちは去って行った。



◇◆◇◆◇

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