4,怪鳥ヴォウフォーグ

第10話

4、怪鳥ヴォウフォーグ



「申し訳ないのですが……」

 俺たちが村に着くなり、村の長老――だろう、多分――が、おずおずと言ってくる。

「皆様には前もってご依頼した件はなかったことに……あ、いえ、違約金はお支払いいたします」


「どういうことですか?」

 フォグが問う。

「怪鳥が去ったと?」

「いえ……」


 長老は、溜息をつき、

「ヴォウフォーグだったのです。三十羽ほどの。

 昨日、村の者が一人攫われ――まあ、喰われたのでしょうが……、その時の特徴から。

 ……帝都に使いを送りました。皆様も、災いが及ぶ前にお引き取り下さい」


 ヴォウフォーグ。怪鳥でも最強クラスのヤツだ。

 秋になると養分を溜めて冬の始めに産卵、春の終わりに孵化。……そこまではどうでもいい。


 問題は、とんでもなく強く、仲間意識が強い。

 翼を切っても生きてたら生えてくるわ、一羽でも攻撃しようものなら全部で襲い掛かってくるわ……三十羽もいるんなら、一軍隊必要だぞ。


 俺たちは、黙って村を見渡した。

 もうすぐ茜色に染まろうかという光に照らされた、粗末な木造の家が十数件。だが、人影はない。

 ……家か、もっと安全なところに避難してるんだろうな。


「大丈夫です。お任せ下さい」

 レンが、自信たっぷりに前に出る。それを見た長老は――


「そ、蒼穹の一族!?」


 ……違うって。


「こいつの髪は染めてるだけだ。それに、肌も褐色だろ? こいつ」

 俺がフォローしておく。


 蒼穹の一族。有名な伝承にある古代人種で、全員がゼニス・ブルーの髪と透き通るような肌を持っていたらしい。そして、絶大な力を。

 確かに、蒼穹の一族ならヴォウフォーグなんか一睨みで逃げてくな。


「いえ、こちらには魔弓士がいます」

「リっちー、すごいんだから!」


「ま、魔弓士!? しかし……」


「リーリア、出来るか?」

「援護してくださいね」


 自信たっぷりに言う彼女。


「……で、ヴォウフォーグが住み着いたのはどの辺りですか?」

 フォグに圧され、長老はその場所を地図で指した。



◇◆◇◆◇

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